五條簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金壱千円に処する。
右罰金を完納することができぬときは金百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
一、罪となるべき事実
被告人は旬刊新民報の編輯兼発行人であるが奈良県字智郡五条町町会議員森脇義夫が自警廃止論者であつたのに拘らず自警存置論者に変節したのでそれを批判するに当り同人が片手を喪失していることと結びつけ昭和二十六年八月二十六日付同紙上に「南泉放談」と題した文中に「当町議立候補当時の公約を無視し関係当局に廃止の資料の提出を求めておきながらわずか二、三日後に至つて存置派に急変したヌエ的町議もあるとか、君子は豹変すると言う。しかも二、三日のわずかの期間内での朝令暮改の無節操振りは、片手落の町議でなくては、よも実行の勇気はあるまじく。肉体的の片手落は精神的の片手落に通ずるとか」と執筆掲載してその頃九百余部を五条町及び附近読者に頒布して公然事実を摘示して森脇義夫の名誉を毀損したものである。
一、証拠の標目(省略)
一、法令の適用
法に照らすと被告人の判示所為は刑法第二百三十条第一項に該当するので所定刑中罰金刑を選択し罰金等臨時措置法第三条第一項第一号による範囲内で被告人を罰金壱千円に処し右罰金を完納することができぬときは刑法第十八条により金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置しなお訴訟費用については刑事訴訟法第百八十一条によつてその全部を被告人に負担させるべきものとする。
弁護人松村常太郎、中島忠三郎の両名は被告人の所為はこと公務員に関する事実であるから無罪である旨主張するがしかしその事実について真実であることの証明がないから主文のように判決をした。(昭和二六年一一月二九日五条簡易裁判所)